「5」事例3 後継者に事業承継したい。
私の家族は、妻(73才)、長男(47才)、二男(43才)であります。
私は、従業員7名を雇用する会社を経営しています。年齢は75才です。
将来は、長男に会社を継いで欲しいと考えています。
相続対策を含め、現在できる対策が知りたいです。
会社純資産額 6000万円 株主は社長1名で100%持っています。
1) 株式譲渡の方法
1 生前贈与
毎年110万円ずつであれば非課税、毎年310万円ずつであれば20万円の贈与税を納税すれば生前贈与ができます。
しかし、毎年310万円ずつですと、約19年の期間が必要です。
一括で贈与すると、会社の純資産額によっては、多額の贈与税の問題が生じる場合があります。
株式を贈与し又はその途中で、後継者が会社を継がなかった場合や後継者としての資質に欠け、又は後継者として不適格な場合には、株の返還の問題が発生します。
その際には株の買取資金や多額の税金の問題が生じる可能性があります。
2 後継者に売却
後継者である長男は多額の買取資金を調達しなければなりません。
多額の資金を銀行から融資を受けた場合には、利息の支払が必要である。
また、株の売主には譲渡所得税が課税されます。
3 遺言による方法
社長が「全株式を長男に相続させる。」旨の遺言を書いた場合には、確実に長男に株が相続される点においては良い方法かも知れません。
ただし、それは社長が亡くなるまでの間に、認知症等の発症で判断能力がなくなったり、重篤な病気にならないという条件が付きます。
社長の判断能力がなくなってしまうと、株主総会で議決権を行使することができなくなり、会社が機能しなくなると言うことです。
社長が認知症や重篤な病気によって、判断能力がなくなる事態になれば家
庭裁判所に対し、成年後見人を選任して貰わなければなりません。
2) 成年後見制度の利用
認知症などで判断能力がなくなった人を保護する役割の人です。
成年後見人の役割としくみ
1)入院や施設入所の手続き
2)通帳他全ての財産を管理する
3)各種契約をする
4)現状維持が基本で贈与などは認められない。
5)本人のための支出しか認めない。(家族のための支出では難しい)
6)誰が後見人になるか不明(専門職がなる場合が増えています)
7)専門職が後見人になった場合には、報酬(月額1.5~2万円)が発生し、
本人が死亡するまで本人の財産から支出します。
8)相続税対策として、株式の生前贈与はできません。
9)成年後見人が議決権(人事権)を行使することになったら、会社が危
機を迎えるかも知れません。
3) 任意後見人とは
社長が元気なうちに任意後見人(長男)を指定しておけば、社長が認知症
などで判断能力が低下した場合、長男が任意後見人として社長の代理をす
ることになり、成年後見人の選任を選択する必要がなくなります。
従って長男が会社の実権(全ての議決権)を握ったことになります。
任意後見人の役割は、基本的に成年後見人と同じです。
従って、相続税対策としての株の生前贈与等は難しいと思われます。